医者になりたいと思った理由はともかくとして、医学部に合格した頃から、はっきりと言語化はできていなかったけれど、自分は「良い医者」になるのだという将来像を、どこかで思い描いていた気がする。初期研修、後期研修の頃も、自分はこれからどんどん成長していくのだと、特に疑うことはなかった。
では、今はどうだろうか。格好良く完遂できるようになるはずだった治療は習得できないまま中堅になってしまった。学術的な活動も、ほとんどしていない。特別なことができるわけでもない、「普通」の医者だ。胸を張って誇れるものがないように感じて、肩身が狭くなることもある。いくらでも代わりのきく人材なのではないか、と思ってしまうこともある。
でも、「良い」ってなんだろう。自分が日々やっている仕事は、「良い仕事」ではないのだろうか。
そんなことはない、と思う。高度なことではなくても、目の前の患者に必要な診療を続けている。派手さはなくても、誰かの役には立っているはずだ。そう考えると、今の自分は、それなりに「良い医者」なのではないか、と思える瞬間もある。
理想としていた自分と今の自分が全く同じでなくても、理想を目指してもがいてきた時間は確実に私たちを変えていたのではないかと思う。

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